愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
 妊娠となると、転勤についても事情が変わってくる。にもかかわらず、二人は意気揚々としていた。
「渡会さん、転勤されるんですか?」
「そうなんだ。専務の推薦でインドネシアの責任者に抜擢されて」
「それはおめでとうございます!」
 なんだかものすごい美談のように聞こえるんだが……。
 俺は芳井を遠ざけたかっただけ……まあ本人が良ければそれでいいのか。
「私、妊娠してから今までのことをずっと後悔していたの。この子の母親として恥ずかしいことをしてきたって……。それに渡会ってバカみたいに懐の深い人だから、私も感化されちゃった」
 どうやら芳井は本当に改心したようだ。
 しかし、渡会まで子供ができたのか……。
「いいなー……」
「素敵な関係ですね」
 いや、そこじゃなくて。
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