愛する秘書さん、そろそろ大団円といきますか
「あの……じゃあ、私は社に戻ります。今からチェックインですよね? お二人とも気をつけて行ってきてください」
「ああ。あ、そうだ。出張中は清掃を止めているんだ。でもたまに行って、空気の入れ替えをしておいてくれないか」
「え……。しょ、承知しました……」
「頼んだぞ」
 そう言って、私の頭をポンポンと撫でる。これは小さい頃からの暉明の癖だ。
 でも椿季さんの前でこういうことをされると、どう反応していいものやら。
 それに、社内では婚約者と噂されている人の前で、暉明の部屋に私が出入りしていることを話してもいいのだろうか?
 気まずい気持ちで椿季さんの様子を伺ったが、何も気にしていないように見えた。
 それもそうか。私は誰が見ても、暉明の妹ボジションだ。それに、田崎の娘なのだ。口さがのない人は私のことを使用人の娘という。椿季さんが気にする必要ないのも当然かもしれない。
「行ってらっしゃいませ」
 私は複雑な気持ちを隠し、二人を送り出した。
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