油圧ショベルに乗った王子様~ノーブルな土木作業員は元気娘を愛でる~
高い背を屈めて私の顔をのぞき込み、彼はにかっと笑った。

「え、いいですよ!」

見ず知らずの私に、事情まで聞いてくれてそこまでしてもらうのは申し分けなさすぎる。

「いいからほら、行こうぜ。
俺も腹、減ってるんだ」

促すように彼が、背中を思いっきり叩いてきた。

「あいたっ!」

睨んだけれど彼は涼しい顔をしていてまったく効いていない。

「なにが食いたい?
焼き肉もいいよなー」

「え、私、お金ないですよ!」

歩き出した彼と一緒に私も歩く。

「奢ってやるから心配するな」

「ほんとですか?
やったー」

あのベンチに座ったときはもう一生あそこから動けそうにないほど心は重かったが、彼のおかげですっかり軽くなっていた。



連れてきてくれたのはカウンター席だけの、七輪で焼く店だった。
ダサお洒落って感じで若者にも人気なのか、デートっぽい人もいる。

「ビールと……」

席に案内され、座りながら彼が注文をする。
ちらっとこちらに視線を送られ意味がわかり、壁に貼っているメニューにざっと目を通した。

「レモンサワーで」

「あいよー」
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