油圧ショベルに乗った王子様~ノーブルな土木作業員は元気娘を愛でる~
カウンターの向こうで店主らしきおじさんが返事をし、手際よく準備が進んでいく。
すぐに目の前にはジョッキとお通しのカクテキが置かれた。

「じゃ、君の失業に」

悪戯っぽく彼が笑う。

「……乾杯」

微妙な気持ちでグラスをあわせ、口に運ぶ。
空きっ腹にアルコールが染みた。

「いまさらだけど。
俺は渡守(わたしもり)、渡守暢祐(のぶひろ)だ。
土木会社で働いている」

町工場の従業員かと思った彼――渡守さんは土木作業員だったらしい。
そういえば現場がどうとか言っていたような。

兎本(うもと)璃世(りせ)、です。
無職になっちゃいました」

「そうだな」

おかしそうに小さく笑い、彼がジョッキを口に運ぶ。
そういうのがなんかいいなと思っていた。

頼んだ肉が出てきて渡守さんが焼いてくれる。
というか焼かせてくれない。
焼き肉奉行体質なんだろうか。

「兎本さんは土木業で働くのに抵抗はないか」

「ハイ……?」

つい、行儀悪く箸を咥えたまま彼の顔を見ていた。

「あー、抵抗はないですけど、体力には自信がないんでご迷惑をおかけするかと……」

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