油圧ショベルに乗った王子様~ノーブルな土木作業員は元気娘を愛でる~
「……どうしてそこまで、見ず知らずの私にしてくれるんですか?」

箸を置いて姿勢を正し、真っ直ぐに彼を見る。
渡守さんも私の様子になにかを感じ取ったようで、口に運びかけたジョッキを置いて私を見た。

「気に入ったから、かな」

本当に楽しそうに小さくふふっと笑い、彼は今度こそビールをひとくち飲んだ。

「人のために怒るのはけっこう難しいんだ。
でも、兎本さんは自分のことを顧みずに社長の息子に抗議した。
そういうの、格好いいなと思ったんだ」

褒められて、一気に酔ったかのように身体が熱を持っていく。
ほてる頬を誤魔化そうと、レモンサワーを口にした。

「でも、あれはさっきも言ったように、頭に血が上って考えなしに突っ走っちゃっただけで」

あの場では私の気は済んだが、ますます状況を悪化させる結果になっている可能性もある。
あれが最善だったかとはやはり言えない。

「それでも凄いよ、普通はできない。
それにやり方がマズかったと反省して、今からでもなにかできないか考えてる」

すっと、彼の視線がこちらを向く。
それは図星だっただけになにも言えなかった。
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