油圧ショベルに乗った王子様~ノーブルな土木作業員は元気娘を愛でる~
すぐにまた、彼が笑顔のまま距離を詰めてくるので私も横へ移動したが、やはり詰められる。

「えっと……」

「ん?
なに?」

渡守さんはとぼけて見せたが、絶対に愉しんでいる。

「今日、終わったら食事、行かないか?」

「あー……」

渡守さんはちょいちょい、私を食事に誘ってきた。
別に嫌じゃないし、誘われるのは嬉しい。
それに彼なら、私が少しでも不快に思っているのを察したら、二度と誘ってこないと思う。
しかし、私には少々、問題があるのだ。

「……今日は前の会社の後輩と約束があっ、て」

曖昧な笑みで、やんわりと誘いを断った。

「そう。
残念」

軽い調子で言い、彼があっさりと引き下がる。
いつも、そう。
私が断ってもくどくど言わず、さっと諦める。

「あ、えっと」

また誘ってください、そう言えばいいとわかっていた。
けれどなかなか、言いづらい。

「そろそろ行くぞー」

「わかりましたー!」

まごまごしているうちに社長が渡守さんに声をかける。

「じゃ、いってくる。
あと頼むな」

「はい、いってらっしゃい」

社長に留守を任され、笑顔で送り出す。
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