油圧ショベルに乗った王子様~ノーブルな土木作業員は元気娘を愛でる~
とはいえ、仕事の空き時間で勉強してくれてかまわないし、参考書や資格取得の受験料も出してくれるという。
本当に至れり尽くせりで驚いてしまう。

お昼休憩を取り、あらかた仕事が片付いたので簿記の勉強をするか掃除をするか悩んでいたら、ドアが開いた。

「おい、来てやったぞ」

「あっ、こんにちは……」

入ってきた年配の男性はずんずんと事務所の中を進んでいき、応接セットのソファーへ横柄な態度で座った。
慌てて立ち上がり、ドリップのコーヒーを淹れる。
来客用にペットボトルのお茶を置いてあるのだが、それを出したらこんなものをオレに飲ませるのかと以前、怒鳴られた。

「あーあ、なんでオレがこんなところに来ないといけないんだ」

スーツの男性――山背(やませ)部長はかなりご不満なようだが、これが彼の通常運転なのだ。

山背部長は親会社の部長さんだ。
でっぷりと出たお腹と脂ぎった頭は不潔そうに見え、さらに彼を苦手にしていた。

「どうぞ」

淹れたコーヒーを彼の前に置く。

「今日はどのようなご用件で……?」

私が言った途端、彼はじろりと私を睨み上げた。

「はぁっ?
用があるから来てやったんだろうが。
社長はどうした?」

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