油圧ショベルに乗った王子様~ノーブルな土木作業員は元気娘を愛でる~
「社長はまだ、現場ですが……」

「このオレがわざわざ来てやったというのに、いないってどういうことだよ!」

彼がテーブルを叩き、身が竦む。
どういうことも私は彼が来るなんて聞いていないし、社長もなにも言っていなかった。
きっと、社長も山背部長が今日来るなんて知らないんじゃないだろうか。

「えっと……。
社長に連絡、取ってみますね」

「あーあ、どいつもこいつも……」

笑顔を貼り付け、ぶつぶつ言っている彼からそろりと離れる。
ダッシュで物陰に隠れ、社長に電話した。
しかし、なかなか出ない。
現場では呼び出し音は聞こえにくいし、それに取れないときもある。
緊急のとき以外はメッセージを入れるようにいわれていた。
けれど、これは緊急だ。

「どーしよう……」

「社長はまだかー!」

私は困っているというのに、山背部長が大声で吠える。
一応、社長にメッセージを送り、少し悩んで渡守さんに電話をかけた。
祈る思いで呼び出し音を聞いていたら、……繋がった。

「あっ、お疲れ様です!
今、いいですか」

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