油圧ショベルに乗った王子様~ノーブルな土木作業員は元気娘を愛でる~
少しでも彼の時間を奪うまいと、早口で捲したてる。

『どうした?』

様子がおかしいと気づいたのか、渡守さんは心配そうに聞いてきた。

「その。
山背部長がおいでになっていて」

そろりと背後に視線を送り彼をうかがいながら、声を潜める。

『わかった、社長に伝える。
悪いけどもう少しだけ、相手してて』

「よろしくお願いします!」

『うん』

すぐに電話は切れた。
渡守さんに電話が繋がってラッキーだった。

「その。
社長と連絡がつきました」

「あーもー、オレを待たせるなよ」

貴重な時間を無駄にされたとばかりに山背部長は貧乏揺すりをしているが、別に次の予定があるとかいうわけではないはずだ。
彼はしょっちゅう、用もないのにやってきては文句を言ってコーヒーを飲んで帰る。
どうもうちを、無料の喫茶店かなんかと間違っているみたいだ。

「……これでも、どうぞ」

間を持たせないといけないので、三時のおやつに持ってきたドーナツを新しいコーヒーとともに出す。

「おっ、お子ちゃまのくせに気が利くな!」

思わずドーナツを引っ込めそうになったが耐えた。
山背部長は早速、かぶりついている。
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