油圧ショベルに乗った王子様~ノーブルな土木作業員は元気娘を愛でる~
呆れるように彼がため息をつき、俯いて唇を噛みしめる。
確かに今はまだできることが少なくて電話番くらいしか役に立っていない。
けれど今後、忙しくて手が回っていない事務や経理の仕事を私に任せたいと社長は言ってくれたし、そのために頑張って勉強している。
なのになんで、こんな役立たずみたいに言われなきゃいけないんだろう。

「お言葉ですが」

すっと姿勢を正し、社長が真っ直ぐに山背部長を見る。
その真剣な態度に部長は少し、たじろいでいるようだった。

「兎本さんはしっかりやってくれています。
以前から課題だった、見積もりや請求書の電子化は彼女のおかげでできました。
これからもっと、活躍してくれるはずです。
私は彼女に投資してよかったと思っています」

社長が私を庇ってくれ、胸が熱くなった。
しかも、期待してくれている。
それだけでこの会社に雇ってもらえてよかったと思えた。
――けれど。

「前のばばぁがパソコンに疎かっただけで、電子化とか誰でもできるだろうがよ。
正社員じゃねぇで派遣で十分だしな。
さっさとこんなヤツ、クビにしろ」

不快そうに山背部長が社長を睨み上げる。
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