油圧ショベルに乗った王子様~ノーブルな土木作業員は元気娘を愛でる~
彼のほうへと一歩、踏み出しかけたがかろうじて耐えた。
ここで私がなにか言って、社長を不利にするわけにはいかない。
それに同じ失敗は繰り返さないと誓ったではないか。

「子会社とはいえ、うちは独立した会社です。
赤字を出しているわけでもなく、そちらにご迷惑をおかけしているわけでもないはずです。
うちにはうちのやり方がある。
お話はそれだけですか?
でしたら、お引き取りを」

立ち上がった社長がドアを開け、山背部長に帰るように促す。

「けっ、オレに逆らったらどうなるのか、覚えてろよ」

捨て台詞を吐き、部長は帰っていった。

「……はぁーっ」

大きなため息をつき、社長が疲れ果てた様子でどさっとソファーへ腰を下ろす。

「お疲れ様です!」

速攻で冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出し、彼の前に置いた。

「ありがとう。
兎本さんもわるいね」

力なく社長が笑う。

「いえ、私は全然!
社長が庇ってくれましたし」

「そう言ってくれると助かる」

今度はほっとしたように笑い、社長はペットボトルを開けて口をつけた。
親会社の部長は最悪だが、社長は尊敬できる人だ。
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