油圧ショベルに乗った王子様~ノーブルな土木作業員は元気娘を愛でる~
口々にみんな、私を心配してくれる。
本当に優しい人たちだ。

「まあ、そんなことしたら、仕事がなくなるけどな!」

ひとりの言葉でみんな笑い出す。
が、それは次第にフェードアウトしていき、憂鬱なため息で終わった。
みんな親会社と山背部長の横暴をよく思っていないが、どうにもできないのが悩みなのだ。

「璃世ちゃん」

私も帰り支度をしていたら、渡守さんに呼び止められた。

「ごめんな、今日は嫌な思いさせて」

「え、渡守さんが謝らないでくださいよ!」

彼が電話に出てくれたから、すぐに社長と連絡が取れた。
もう、感謝しかない。

「今度アイツが来たら、現場まで呼びに来いよ」

「はぁ……?」

これってどういう意味なんだろう?
やっぱり仕事中に電話は迷惑とか?

「そしたらアイツから離れられるし、社長とも連絡つくし、一石二鳥だろ」

片頬を歪め、にやっと彼が悪戯っぽく笑う。

「お気遣い、ありがとうございます」

事務所に山背部長をひとり残していいのかはあれだが、こうやって気遣ってくれるのは嬉しい。

「次からはそうしろよ。
社長にもいっとくし」

「そうですね」

私も彼に笑い返す。
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