油圧ショベルに乗った王子様~ノーブルな土木作業員は元気娘を愛でる~
バーコード払いで支払っても、引き落とし日にお金がある可能性は低い。
そもそも明日の給料日に、お金が振り込まれるのかすら怪しい状況だ。

「……はぁーっ」

またため息をつき、川面を眺める。
日の光が当たってキラキラして綺麗だが、それよりもお腹が減った。
就職活動をするとして、当面のお金をどうするかが問題だ。

「なあ」

「ひゃっ!」

唐突に頭上から声が降ってきて、飛び上がりそうになった。
こわごわ見上げると、私よりも少し年上そうな眼鏡の男性が立っていた。

「川の水は冷たいだろうし、溺れるのは苦しいと思うぞ」

いいともなんとも言っていないのに、彼が隣に腰掛けてくる。
作業着姿なので近くの工場かなんかの従業員なんだろうか。
それにしてはイケメン……というのは失礼だけれど。
眼鏡の奥の目は細く涼やかで、右目下のほくろがさらに爽やかに見せる。
鼻筋は通っており、薄い唇はキスを誘うかのように形がいい。
少し長めの黒髪はぼさっとしているが、整えればきっと、かなりのいい男に違いない。

「はぁ……?」

なにを言っているのかわからなくて、しばらく考える。
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