油圧ショベルに乗った王子様~ノーブルな土木作業員は元気娘を愛でる~
でも確かに渡守さんに不満なんてない。
ただ、私はあることがあって恋に踏み出すのが怖いのだ。

「まあ、落ち着いて」

「はぁーっ」

渡守さんに宥められ、後輩は椅子に座り直してグラスに残っていたお酒を一気に呷り、ため息ともつかない息を吐いた。

「俺が土木作業員というのもネックになっているんだと思います」

「それはありません!」

間髪入れず、渡守さんの言葉を否定する。

「別に犯罪をおこなっているとかでなければ、職業で差別したくないです。
それに私は、渡守さんも職場のおじさんたちも優しくて大好きですよ」

「はぁーっ」

後輩と渡守さんが揃って、呆れるようにため息をつく。

「おっちゃんたちと一緒にされたのはあれだけど、まあ大好きが聞けただけいいか」

照れくさそうに彼は後ろ頭を掻いている。
後輩は赤い顔でもらったお冷やを飲んでいるが、なんか私、恥ずかしいこと言った?

「てかですよ。
反対に先輩が苦手なタイプってどんな男ですか?」

「んー?
御曹司?」

「うっ」

私の答えを聞き、グラスを口に運んでいた渡守さんは喉を詰まらせているが、なんでだろう?

「あー、わかります。
世の御曹司が全部アレだとは思いたくないですが、親が社長だからって威張ってそうですもんね」

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