油圧ショベルに乗った王子様~ノーブルな土木作業員は元気娘を愛でる~
すぐに戻ってきた彼が運転席に座り、シートベルトを締める。

「あの、お酒は……?」

「璃世を送らないといけないから飲んでない」

そういえば頼んでいたのはコーラだった。
それに渡守さんがそんな嘘をつくとかありえない。

「ほかにないなら車出すけど」

「あっ、はい」

すぐに車は走り出した。
きっと聞きたいことはあるはずなのに、渡守さんはなにも言わない。

「あの、車……」

勇気を出して口を開いたものの、横目でじろりと睨まれて消えていく。

「俺の。
意外と稼いでるんだ、俺」

「そう、なん、だ……」

渡守さんは不機嫌そうで、小さく身を縮みこませた。
土木作業員に高級外車が似合わないとか、失礼だったなと反省した。

無言のまま、車は進んでいく。

「なあ」

唐突に声をかけられ、ぴくんと肩が跳ねる。

「あれ、誰?」

「だから、……昔の同僚」

「違うだろ」

私としては誤魔化したいのに、彼は許してくれないらしい。
なにも言えなくて、堅くバッグを掴んだ自分の手を見つめる。

「……はぁーっ」

しばらくして彼がため息をつき、びくりと身体が反応した。

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