油圧ショベルに乗った王子様~ノーブルな土木作業員は元気娘を愛でる~
「ごめん、無理に聞きたいわけじゃない。
ただ、アレが璃世が俺との恋に落ちてくれないわけなのかな、って」

悩むように彼は、後ろ頭を掻き回している。
そういう優しい人だから、私は渡守さんに好意を抱いているのだ。
それにこれは、彼の問題でもある。
私のわけを、彼に知ってもらわなければ。

「その。
昔、彼と付き合っていて」

同期入社して意気投合し、すぐに付き合い始めた。
最初のうちは楽しかったが、会社はあんな状態だ。
仕事の疲弊が関係へと影響していく。

彼が会社を辞めると聞いたのは、もう退職願を出したあとだった。
私には言ってくれなければ、相談もなかった。
しかも彼はよその会社に女を作っており、彼女の口利きで転職も決めていた。

もちろん、彼を責めたが。

『だって璃世、疲れてる僕を癒やしてくれないし。
疲れて帰ってきたら、癒やされたいんだよ』

と、まるで私が悪いように言われた。
確かに、そんな余裕はなかった。
けれどそれはお互い様だ。
私だって疲れていて、彼に癒やしてほしかった。
それに私は少しでも彼の負担にならないように努力していたのだ。

彼が会社を辞めても人員の補充はない。
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