油圧ショベルに乗った王子様~ノーブルな土木作業員は元気娘を愛でる~
もしかしてこれは、自殺でも考えていると思われているんだろうか。

「なんか悩みがあるなら聞いてやるぞ。
人に話すだけでも気持ちが軽くなる」

ん、と持っていたエコバッグからペットボトルのお茶を取り出し、彼は差し出してきた。

「ありがとう、ございます……」

それを複雑な気持ちで見つめながらも、ありがたく受け取る。
彼が隣でコーラのペットボトルを開け、プシュッと音がした。
そのままごくごくと勢いよく飲み、ぷはーっと最後に彼が炭酸を吐き出す。
なんだかそれが凄く気持ちよさそうで、気が抜けた。

「その。
ご心配はありがたいんですが、死ぬ気なんてまったくないんで」

手持ち無沙汰にもらったペットボトルを手の中で弄ぶ。

「そうなのか?」

さぞ意外そうに彼は黒縁眼鏡の奥で何度か瞬きした。

「滅茶苦茶深刻そうな顔でため息ついてるし、ずっとここにいるからてっきりそうなのかと」

「ずっと……?」

とは、そんなに前からこの人は私を観察していたんだろうか。

「現場から帰るときもここにいたし、コンビニ行くときも。
帰りにまだいたら声かけようと思ってた」

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