油圧ショベルに乗った王子様~ノーブルな土木作業員は元気娘を愛でる~
「それは申し訳なかった。
すまない」

真摯に彼は頭を下げてくれた。
それで気が済んだ。

「いえ。
私もよく間違われるので。
その、怒鳴ったりしてすみませんでした」

ぺこんと私も頭を下げ返す。

「いや、いい。
見た目で年齢を判断した俺も悪いし」

しかし彼はなおも謝ってくれた。
もの凄くいい人に見えるのはあの最低御曹司の反動だろうか。

「でも、会社員ならなんで、あんな時間からこんなところにいたんだ?」

「うっ」

彼の疑問はもっともだ。
正確な時間はわからないが、たぶん三時頃からここに座っている。
そして今はようやく終業時間になったくらいだ。

「……か、会社をクビになってですね……」

こんなことを告白するのは恥ずかしく、身を小さく丸め膝の上で拳を堅く握り、だらだらと変な汗を掻きながら視線をあちこちに彷徨わせる。

「クビってなにをしたんだ?」

「そ、それは……」

あれは大人げなかったなと反省したところなので、なおさら言いづらい。

「クビとかよっぽどのことがなければならないだろ」

それは彼の言うとおりなだけに、さらに言いにくくなる。
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