ブルー・ベリー・シガレット

ブルー



 今になって思えば、黒羽藤くろはふじのメンヘラ培養沼人生は幼児の頃からすでに始まっていた。

 ある日、ひとりで絵本を読んでいた六歳の俺にひとりの女の子が話しかけてきたことを思い出す。
 

「ふじくんは、あたし以外の子とあそばないでね」


 はきはきと喋る彼女に幼い俺は圧倒されていた。


「うん?」

「やくそくして! あしたもあたしと遊ぼう?」

「ああ、うん」


 とにかく絵本の続きを読み進めたかったので、てきとうに返事をした。明日のことなんて考えられないし、明日になって考えればいいや。ここで断ってもどうせ会話が延びるだけ、彼女が納得するまで話し合いは続くはず。

 さっさとおしまいにして絵本を読みたかったので、俺はにこっと笑って見せた。すると彼女は嬉しそうにはしゃいで去っていった。ご機嫌がくるくると裏返る様子は少しだけ恐ろしくも感じたけれど、こんなものかとすぐに忘れた。


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