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クジを引き、黒板に書かれた自分の席の数字を探す。

ーーあっ。今日はすごくついてる日だ。

どうして席替えごときで騒げるんだなんて思っておきながら自分の新しい席を知って内心、結構心が浮つい
た。

窓側の1番後ろだなんて、誰もが羨むベストポジションじゃん。喜ぶに決まってる。


周りがダラダラとする中、早々に自分の机を移動して窓から降り頻る雨を眺める。

これは帰りも土砂降りだな…なんて考えてると優しい柔軟剤の香りがした。


あっ……水谷くん。


なんと、私の前の席はみんなが狙ってた彼、水谷葵生(ミズタニアオイ)くんだった。


サラサラな黒髪に180はある長身、切れ長な二重の目。そう、イケメンというやつだ。

でもクールで無口な性格だから何を考えているのか分からず、近寄りがたい為女子は密かに想いを寄せているという感じみたい。

勇気を出して告白をする子もいるみたいだけど「興味がない」という一言であっけなく終わるらしい……と佳奈ちんが言ってた。


まぁ、私は彼に興味はないけど、人と話すのが苦手な私にとって無口な彼が前の席なのはちょっと有り難い。


特に話さなければ女子からの反感を買う事もないだろうし。


その後授業が始まり、プリント等が配られる際も水谷くんは振り返らずそのまま腕を後ろに回して渡すスタイルの為やはり会話はなかった。


でも、1つだけ後ろから見てて気づいた事がある。

授業中、時々窓の外を眺めながらすごく寂しそうな顔をしている……気がする。

雨のせい?なんて思いながらもつい気になってその綺麗な横顔を後ろから見てしまう。


どんなに可愛い子から告白をされても一切付き合わないし、男子とふざけ合ったりしてるところも滅多に見かけない。

1人、他のクラスの男子で教科書を借りに来てる人とは仲良さげだったけど、それぐらいだ。


彼はいったい……どういう人なんだろう。




そんな気持ちが芽生えたのは初めてだった。
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