孤独な受付嬢は凄腕冒険者の愛に包まれる
 ロネ家。それはマーシャを屋敷から追い出した、義父母の親戚一家のことだ。
 彼らは爵位と一緒に義父が営んでいた事業をそのまま引き継いだはずだが、恐らく欲を掻いて無茶な投資でもしたのだろう。平民向けの記事ゆえ面白おかしく書かれているが、要するに彼らには商売の才能が全く無かったらしい。
 子爵が妻と夜逃げをした後、長男が財政の立て直しを図ったようだがこれも失敗に終わり、長女は娼婦に身を落とすことを嫌がって恋仲だった庭師と逃亡。現在、子爵邸はもぬけの殻となっており、近々競売に掛けられるものと思われる──。
 よくもまぁ短期間でここまで、と逆に感心してしまうような悲惨な結末に、マーシャの涙は見事に引っ込んだ。
 レオも安心したように胸を撫で下ろしているが、いや、しかし。

「……。……あの、私……レオさんに、子爵家のこと話しましたっけ?」
「はっ」

 レオはまたもや「しまった」と頬を引き攣らせ、やがて観念したように顔を覆ったのだった。



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