孤独な受付嬢は凄腕冒険者の愛に包まれる


 その後、二人はちょうど外から戻ってきていたギルド長の元へと向かい、受付嬢の間で起きた問題を報告した。
 最初は疲労感たっぷりに耳を傾けていたギルド長だったが、次々と語られるベリンダたちの不適切行動に段々と眉間の皺が深くなってゆき、最後にマーシャの顔色を確かめては大きなため息をつく。

「……確かに前に見たときより元気がないな。もっと早く言ってくれて良かったんだぞ」
「すみません……」
「いやいや、責めてるわけじゃない。悪いのは幼稚な真似をしたベリンダたちの方だ」
「そうだね。で、処分はどうするの?」

 ギルド長はどこか嫌そうな顔でレオを一瞥した。彼がベリンダの言い分を全く聞く気がないことが一目瞭然だったからだろう。

「即刻クビにしてほしそうな顔をしているところ悪いが、ひとまず事実確認からだ。いきなり全員クビにしたらまた職員の募集からだぞ?」
「本部から臨時で派遣してもらえば良いんじゃない? 安心して、もちろん僕も口添えするよ」
「絶対に辞めさせる気だなお前」

 ギルドの看板であり稼ぎ頭でもある<白銀>の冒険者ともなれば、本部の上層部に顔が利くとマーシャも聞いたことがある。
 貴重な人材をギルド側の不手際で失うわけにはいかないため、多少の融通を利かせるのが普通なのだそうだ。
 しかし自分のためだけにそんな……と視線をさまよわせていると、不意にレオと目が合った。彼はいつもの余裕を感じさせる眼差しでマーシャに微笑みかける。

「悪いことしたのは向こうなんだから、マーシャさんは堂々としてて」

 レオの言葉にギルド長も鷹揚に頷くと、「とりあえずお前はちょっと寝てこい」とマーシャを仮眠室に放り込んでしまったのだった。



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