孤独な受付嬢は凄腕冒険者の愛に包まれる


 結局、ベリンダからマーシャに対する直接の謝罪はなかった。
 想い人に自分の醜い部分を真正面から非難されたのが相当応えたのか、ギルド長との話し合いを経て、解雇されることが決まったそうだ。
 一方、ベリンダと一緒になって嫌がらせをしていた受付嬢は、あの後マーシャに頭を下げに来た。これからは心を入れ替えるとの事だったので、マーシャは謝罪を受け入れることにしたのだった。


「──長い一日だったね」
「そうですね……」

 ここ暫く頭を悩ませていた問題が半日で解決したので、正直なところマーシャとしてはあっという間の出来事だった。勿論、疲労感は物凄いのだが。
 マーシャはちびちびとエールを飲み進めながら、ちらりと酒場の一階を見遣る。ここは昼間に利用した賑やかな大衆食堂とは違って、程よく落ち着いた空気のある店だ。マーシャとレオがいるのは二階の半個室のようなスペースで、それぞれの席はパーテーションで区切られている。
 酒場に初めて来たマーシャがつい視線をあちらこちらに散らしていると、くすくすと向かいから笑い声が届いた。

「後で下に行ってダーツでもしてみる?」
「え! い、いいえ、私、運動は苦手で……!」
「そっか」

 「運動……?」とレオが笑顔のまま疑問符を浮かべているとは露知らず、マーシャは落ち着かない動きで居住まいを正した。

(食事に誘われて来てみたけど、これってやっぱり……デート、よね?)

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