孤独な受付嬢は凄腕冒険者の愛に包まれる
 冒険者ギルドには、主に二種類の依頼が集まる。
 一つは近隣に暮らす住人からの相談だ。遺失物や尋ね人の捜索、さほど危険度の高くない小型魔獣の駆除など、それらを解決する術を持たない人々がギルドにやって来るのだ。依頼一つ一つの報酬は低いが、発注が途絶えることはまずないので、新米冒険者の良い研修代わりにもなっている。
 そしてもう一つは、貴族や商会からの特別依頼だ。こちらは国が指定した大型魔獣の討伐に参加する冒険者を募ったり、騎士団に同行して要人警護に当たったりと、より専門的な知識と豊富な経験が求められる。ギルドで多くの依頼をこなし、特定のランク以上に達さなければ受注ができないため、これらは冒険者が目指すべき一つの指標と言えよう。
 ギルド職員はこうした依頼の報酬内容を決定したり、掲示板に載せるための依頼文を作成したり、所属冒険者の実力に応じた依頼を割り振ったりと、細々とした事務作業全般を担う。中でも危険度の高い依頼においては、該当地域の予備調査や支給品の用意も行わなければならないので、それなりの体力も要求される。
 マーシャは次々と舞い込む依頼を書面に書き起こしていく傍ら、今まで聞いたこともなかった魔獣の名前や階級を覚え、必要があれば予備調査にも連れて行ってもらうなどして、何とか仕事に食らいついた。

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