別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
『お忙しいところ無理を言って申し訳ありません。ご挨拶が遅くなりました、進藤綾人です』

 いつもと変わらない爽やかな笑顔で挨拶し、くたびれた様子も緊張した雰囲気もまったくない。むしろここでも私の方が緊張していたと思う。

 続けて凌空の件で真剣に謝罪をする綾人に、私は慌て、両親は恐縮していた。

 凌空がいるので、思った以上に場は和んだ。

 両親と綾人はすぐに打ち解け、まだご飯を食べていないという綾人に父が料理を振る舞う。私もたまに凌空と食べさせてもらうので父も慣れたものだ。

 母は嬉しそうにアルコールを勧めようとしたが、仕事の関係で綾人は丁寧に断る。

 ふたりがこんなに上機嫌なのは久しぶりに見た。凌空を妊娠していることがわかり 、ひとりで生んで育てると決めた時、両親は心配していたが最後は私の意思を尊重してくれた。凌空が生まれてからも可能な限り協力してくれて、感謝してもしきれない。

 大袈裟かもしれないが、綾人と両親がやり取りしているのを見て、なんだか切なくなってしまう。綾人との結婚は私も望んだ幸せなもので、結婚しても私が娘である事実は変わらないのに。

『綾人さん、可南子と凌空のことをよろしくお願いします。この子が子どもの頃、今より店が忙しかったのもあって、随分と寂しい思いや我慢をさせてきたんです。そのせいで、ひとりでなんでも抱え込んでしまうところもあって、そこは私たちも申し訳なく思っているんです』

『ちょっとお母さん。申し訳ないとかやめてよ。お父さんにもお母さんにも感謝してるんだからね』

 帰り際、改めて深々と綾人に頭を下げる母につい口を挟む。父も神妙な面持ちだ。
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