別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 気づけば車は停まっていて、綾人が先に運転席を降りた。彼に続こうとしたら、こちらに回り込んだ綾人が外から私の方のドアを開ける。

 降りようとする前に、手のひらの上に綾人の手が重ねられる。

「可南子のひとりでなんとかしようとする性格はわかっているけれど、これからはもっと俺に頼ってほしいし、甘えてほしい」

「ありがとう、綾人」

 目が合って、彼が軽くこちらに身を乗り出してくる。どちらからともなく距離を詰めて唇を重ねた。ごく自然な流れでキスしてしまったが、すぐに我に返ってうしろを見る。

「あ、凌空、寝ちゃいそう」

 車に乗った頃は、新幹線のリュックに夢中でいろいろおしゃべりしていた凌空だが、気づけば静かになっていた。案の定、目は半分閉じて今にも夢の中に旅立ちそうだ。

 綾人が度は凌空の方に回り込でドアを開ける。

「悪いな、凌空。起きてくれるか?」

「んー。りく、ねみゅい」

 眠たさで駄々をこねそうな凌空を、綾人はチャイルドシートから降ろし抱き上げる。彼の胸に顔をうずめ凌空は眠たそうにしていたが、そうやって甘えることに遠慮はない。

「凌空、ほら。お父さんのおうちに着いたよ」

 私も降りて声をかけると、凌空はおもむろに頭を上げて周りを見た。初めて見る光景に凌空は目をぱちくりとさせる。

「わぁー」

 打って変わって目をキラキラさせる凌空の反応は無理もない。彼の知っている家とはまったく違う、外国の映画にでも出てきそうな広く整備された庭と白を基調とした洗練されたデザインの建物は、家というよりホテルみたいだ。

 素敵で見惚れてしまいそうな外観ではあるが、それ以上にここが彼の実家なのだと思うと圧倒されてしまう。住む世界が違うとは思っていたけれど、まさに言葉通りだった。
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