別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 ひとまず玄関で慌てて頭を下げて名乗った後、リビングに通された。そこには綾人のお父さんもいて、改めて自己紹介をする。外観のイメージ通り中も広々として天井が高く、置かれている家具もデザインが統一されていて、外国映画に出てきそうな雰囲気だ。

 凌空を挟んで綾人とソファに横並びに座り、斜め横のソファに綾人のご両親が腰を下ろした。

「まったく。綾人、可南子さんと凌空くんを連れてくるって連絡があってから、いろいろ質問してもまったく返信がないんだもの」

 綾人のお母さんは不満そうに語る。質問ってどんな内容!?と焦ったのは一瞬で、今日のために、私や凌空の好みを事細かく綾人に尋ねていたと続けられる。

 綾人のお母さん は想像以上に明るく気さくな印象だ。

「可南子さん、今まで苦労をかけたね。あちらのご両親にも申し訳ない」

「い、いいえ」

 シャッツィの元社長である綾人のお父さんも、穏やかで物腰が柔らかい。凌空の件では責められるどころか、逆に謝られ私の両親のこともすごく気遣われた。

「凌空くん、美味しいかしら?」

「おいしい!」

 凌空の月齢に合わせたジュースやお菓子をわざわざ用意してくれていて、ビスケットを頬張る凌空を見るご両親の眼差しはとても穏やかだ。

「本当、綾人の子どもの頃にそっくりね」

「飛行機が好きなのも似ているな」

 しみじみとふたりは呟く。私は凌空が食べ物をこぼして高級そうなソファを汚さないか気が気ではない。

 すると綾人のお母さんの視線が、私と凌空の隣に座っている綾人に向けられた。
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