別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「さっきはあんな風に言ってしまったけれど、綾人と結婚を決めてくれて本当にありがとう。凌空くんをひとりで生む決意もしてくれて。あの子、幸せ者よ」

 お母さんの言葉に、なんだかたまらなくなる。結婚を反対されたり、凌空を認めてもらえないかもしれないと、そんなことばかり考えていた自分が恥ずかしい。

 私はぎゅっと握りこぶしをつくった。

「お礼を言うのはこちらの方です。勝手な真似をして、綾人さんを傷つけて子どもの存在を知らせずにいたのに、彼は私を責めずに全部受け止めてくれたんです。私も彼をずっと忘れられなかったから……私の方こそ幸せ者です」

 思わず声が震えてしまう。お母さんもなんだか泣きそうだ。

 それから綾人のお母さんといろいろ話して盛り上がる。しばらくして、リビングのドアが開き、私たちの意識はそちらに向いた。

 現れたのは綾人で、凌空は抱っこされている。

「凌空が寝た」

 端的に状況を説明され、私はすぐさま立ち上がる。

「もともと眠たかったのに疲れさせてしまったね」

敦史(あつし)さん、こっち」

 苦笑するお父さんにお母さんが指示を出す。移動できる柵付きの子どもベッドを寄せてきた。まさかこんなものまで用意していたとは思いもしなかった。お父さんは凌空をベッドの上にそっと置く。

「すみません」

「気にしないでね。長男夫婦も娘を連れてくるってから慣れているの。凌空くんの従妹ね」

 先ほど話題に上がったが、綾人のお兄さんは二年前に結婚して、一歳になる娘さんがいるらしい。
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