別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 ホテルの一室、それもスイートルームを彷彿とさせる間取りと綺麗さで、ベッドルームと勉強などをするためのデスクスペース、さらにソファなどもあるリビングルームなどが段差やアーチ壁で区切られつつひと続きとなっている。

 グレイッシュカラーをベースにシックな雰囲気なのは、綾人の好みなのだろう。彼がひとり暮らしをしていたマンションも同じテイストだった。

 新鮮な気持ちで辺りを見回 しながら、ここに来るまでに気になっていた件について尋ねる。

「綾人は、なんで付き合っている時に実家のことをあまり話してくれなかったの?」

 彼がシャッツィの御曹司なのは周知の事実だったが、綾人からは家族や実家について話題になることはほとんどなかった。基本的な家族構成や子どもの頃の話などはたまにあったけれど。

「もともと、あまり実家の話をするのが好きじゃないんだ。どうしても家族の話 になると、シャッツィのこととか御曹司とか好きにレッテルを貼られていろいろ勝手に言われるのがわかりきっているから」

 過去の経験からか綾人はどこか鬱陶しそうだ。きっと彼は、家柄のせいで私には想像のつかない苦労をしてきたのだろう。

「私も……実家の話を聞いたら、綾人をシャッツィの御曹司とか、そういう色眼鏡で見ると思った?」

 私の問いかけに綾人は虚を衝かれた顔になる。

「違う!」

 そしてすぐさま気迫溢れる面持ちで否定した。
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