別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 綾人は苦々しく続ける。

「彼女の父親は、娘と俺との結婚を望んでいたみたいだが、その時はっきりと、可南子と……別に結婚したい相手がいるって言ったんだ」

 でも、私が勝手に勘違いしてしまっていた。

「不安にさせて、ごめん」

 神妙な面持ちで謝罪する綾人に、かぶりを振る。

「私の方こそ今になってごめんなさい」

 付き合っている時に、こうやってぶつかれていたら今とは違う未来があったのかな?

 後悔しそうになっていたら、そっと抱き寄せられた。

「今になってでもかまわない。可南子が不安だったことをそうやって言ってもらえてよかった」

 綾人の前向きな発言に救われる。過去は変えられないけれど、これから一緒にいるために、私も変わらないと。

 見つめ合い、どちらからともなく唇を重ねる。

 口づけが終わり、照れくささもあって改めて気を取り直し室内に視線を飛ばす。

 棚には飛行機やパイロット関連の書籍が並んでいて、なにかの賞状や楯みたいなものも飾られていた。

「これ、綾人?」

 そこで小学生くらいの綾人とパイロットの制服を着た男性の写真がある。綾人は私の隣にやってきて写真に視線を向けた。

「ああ。小学生の頃にパイロット体験企画があって、それに参加した時の写真なんだ」

「綾人って本当に子どもの頃からパイロットになりたかったんだね」

 幼い頃に抱いた夢を貫き通して、実際に叶えるなんて本当にすごい。
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