別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「怖かったんだ。告白も俺からで、会う約束も俺の都合を優先するばかりだったから。俺の方が可南子を想っていて、気持ちが重たすぎるんじゃないかって。あまりにも求めすぎて、可南子に嫌われるのが怖かったんだ」

「そんな……」

 綾人の方が私を想っている? 気持ちが重たい?

 全部逆だ。私も綾人の負担になりたくないし、嫌われたくなかった。いつ彼に別れを切り出されてもおかしくないって思っていたくらいだ。

「それなのに俺は自分のことで精いっぱいで、忙しさにかまけてきちんと可南子と向き合えなかった。結婚するなら可南子以外考えられないのに、副操縦士になるには何年もかかるし海外訓練もあるのもわかっていたから、どこかで迷いもあった」

「綾人」

 彼の言葉を遮るように少し大きめの声で名前を呼ぶ。あふれそうになるこの感情の名前はわからない。胸が締めつけられて、苦しい。けれど私も伝えないと。

『そうやって可南子はひとりで抱え込むくせがあるのをわかっていたのに、ちゃんと可南子に向き合えなかったことをずっと後悔しているんだ』

 後悔してほしくない。自分を責めないでほしい。

「私ね……。綾人に告白されて付き合い出してからもしばらく信じられなかった。でもね、綾人が私のことを大事にしてくれていたの、ちゃんと伝わっていたし、私も綾人が好きだったよ。なかなか会えなくても、寂しくても、綾人がパイロットを目指して頑張っているのをわかっていたし応援してたから……だから、会いたいとかワガママとか言って困らせたくなかったし……私も嫌われたくなかった」

 声が震えて、きちんと伝えられない。私こそ、ちゃんと綾人に向き合えなくて川嶋さんの話を鵜呑みにしてしまったところもある。
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