別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 さらに言葉を紡ごうとしたら、真正面から抱きしめられた。

「可南子が好きだよ。愛している。俺がどれほど可南子を想っているのか、これからはちゃんと伝えていくし、態度や行動でも示す。約束する」

 今度こそ泣きそうだ。綾人の背中に腕を回して私からも彼を抱きしめる。

「可南子」

 名前を呼ばれ顔を上げると、不意に足が床から離れた。
「わっ!」

 腰と背中を支えられ、小さい子どものように抱き上げられる。綾人はさっさと足を動かし始めた。行きついたのはソファで、そっと下ろされてから綾人がすぐ横に座り、こちらを見てくる。

 目が合いつつも数秒の沈黙に、鼓動がさらに速まる、ややあって彼は私の髪先を軽く撫でた。

「この髪型って時間かかるのか?」

「へ?」

 唐突な質問に変な声が出てしまった。けれど、朝にセットしたことを思い出し真面目にどれくらいだったかを考える。髪をゆるく巻いてから、いくつかの編み込みを作って……それなりに時間はかかる。

「うん。いつもよりは時間をかけてセットしてみたんだけれど……もしかして、似合わなかった?」

「いいや。かわいいよ」

 私の不安はあっさりと解消された。それなら、綾人はなにを気にしているのだろうか。軽く首を傾げると、腰に腕を回され、彼が身を乗り出してきた。

「ただ……押し倒したら、綺麗な髪型を崩しそうだなって」

「お、押し倒すって」

 予想だにしない発言が彼からあり、混乱している間に回された腕に力が込められ、綾人の方に引き寄せられる。
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