別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「ね、綾人。待って。下に、ご両親と……凌空もいるし」

「心配しなくても聞こえない」

 必死で訴えかけたが平然と返される。

 そういう問題じゃない!と声には出せず、それどころか耳元で吐息混じりに囁かれ、意識をどこに持っていったらいいのかわからない。

 いつの間にかブラウスの裾から綾人の手が滑り込まされる。鳥肌が立っている肌を彼の手のひらが撫でた。

「お願い……やめて。も、本当に……ダメ」

 もしも凌空が起きて、美奈子さんが呼びに来たら? そうではなくてもなにか用事で誰かがこの部屋に来る可能性もある。

 精いっぱい強気な声で訴えると、さすがに綾人の手が止まった。涙目で彼を見つめていると、困惑気味に微笑んだ。

「その顔は反則だな。なんでも言うこと聞いてしまう」

 そう言って軽く唇が重ねられ、彼の返答に私はホッと胸を撫で下ろす。私の様子を見て綾人は困惑気味に笑った。

「調子に乗りすぎた。悪かった」

「まったくだよ」

 唇を尖らせ返し、体をずらして私は綾人の膝の上から下りる。

「さっきも言ったけれど可南子に嫌われるのは御免だからな」

 あんな強引なことをしておいて?と返そうと思ったが、綾人はきっと私が本気で嫌がっていなかったことに気づいているんだ。

 そっと彼の手を解放したら、ぎゅっと抱きしめられた。

「やっと手に入ったんだから」

 なんでも言うことを聞いてしまいそうなのは私の方だ。そこでふと、あることを思い出す。
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