敏腕パイロットは最愛妻を逃がさない~別れたのに子どもごと溺愛されています~
「ううん。暑いし、凌空の体力的にもこれくらいでちょうどだよ」

 明日、綾人は休みだ が、どっちみち私が明日は休みが取れても午後からになるので結果は一緒だ。

「ありがとう。凌空、遊園地自体が初めてだから、綾人が行こうって誘ってくれてすごく今日を楽しみにしていたの」

 いつ遊園地に行くのかと、何日も前から寝る前に尋ねていた。ワクワクしている凌空を見て、幸せだと思う半面、胸が締めつけられる。

「凌空との約束を守ってくれてありがとう」

「これくらい、なんでもないよ」

 笑顔で答えた綾人に、私はつい語り出す。私が約束にこだわるのは、理由があった。

「昔、家族で遊園地に行く約束をしてね。普段、土日はお店を営業しているから難しいんだけれど、当時、私が大好きだったアニメのショーがあるって聞いて必死にお願いして、その日は特別にお店を閉めて連れていってくれるって父が言ったの」

 両親の仕事上、遠出のお出かけも旅行もなかなかできない。だからこそ、わざわざお店を休んで連れていってくれる遊園地がすごく楽しみだった。

「でも、一週間前に団体客がどうしても予約したいって言ってきて……。しかもお父さんのお世話になった方からの推薦だったらしく、結局両親は遊園地を諦めて店を開けることにしたの」

 当然、私は納得できなかった。別の日に連れていくという両親の譲歩も決して受け入れず、思いのたけをぶつけて、泣きながら両親に訴えた。
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