別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
『できない約束ならしないでよ! お父さんもお母さんも大っ嫌い!』

 そう言った時の父と母の傷ついた顔が忘れられない。後から姉に諭され、慰められたが、しばらく両親とは口を利かなかった。

「だから、俺が凌空に飛行機を見せる約束を勝手にした時、可南子はちゃんと守れって言ったんだな」

『凌空と約束したなら、ちゃんと守ってあげて』

 約束を守ってもらえなかったつらさはよく知っている。大人にとっては次がある、くらいの気持ちでも子どもにとってはその時がすべてなのだ。

「うん。でもね、姉に言われたのもあって、両親の気持ちとか苦労も理解してちゃんと謝ったんだよ」

 自営業なんだから好きに休めばいいじゃないかと何度も思ったが、小学生の子どもをふたり抱え、両親も店を軌道に乗せるために必死だったのだろう。そういった事情を汲めるようになったのはもっと成長してからだ。

「それから、簡単に約束することも、忙しい相手に希望を言うのも苦手になっちゃって……」

 そんな私の性格は綾人との付き合いにも現れた。忙しい綾人に自分から「会いたい」とか「次はいつ会えるの?」と言い出せない一方で、約束をしたらそれが守られない時のつらさも知っている。

 綾人と別れた原因は、私にもたくさんあった。

 自分の思い出を重ねて、少しだけ罪悪感を吐き出す。すると突然、綾人に肩を抱き寄せられた。
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