別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「初めてが綾人の操縦する飛行機なら、頑張って乗ってみようかなって……そう答えたんだよね」

 姉のところに行く際、凌空のためにも飛行機に乗ろうと決めた時、綾人との約束が頭をよぎったのも本当だ。綾人にとってはなんでもない会話だったのかもしれないけれど、ずっと彼の言葉が心に残っていた。

「その約束、果たさせてほしい」

 真面目な表情に、ドキリとする。もしかして綾人も私が思う以上に、このやり取りを大事にしてくれていたのかな?

「うん」

 答えると、素早く額に口づけられる。気がつけば観覧車は地上が見えるところまで下りてきていた。

 もう一周乗りたい!と訴える凌空を宥めすかし、観覧車を後にする。さっき観覧車から見ていた飛行機はもう空の彼方へと姿を消していた。

「でも可南子と凌空と一緒に飛行機に乗ってどこかに行くのも悪くないな。社員割引があるから凌空も可南子も格安で航空券が取れる」

「そうなんだ」

 本人はまだしも家族まで航空券の割引ができるとは意外だ。綾人は口角をニヤリと上げ、凌空を見た。

「もう少し大きくなって、凌空がそれを知ったら、何度も飛行機に乗りたいって言い出しそうだな」

 凌空の飛行機好きがそこまで続いているかはわからないが、綾人の前例がある。好きを極めて、行き先よりも飛行機に乗ること自体が目的になってもおかしくない。

「そ、それは困るから凌空には極力、内緒にしておいて!」

「ないしょ?」

 ちゃっかり聞いていた凌空に聞き返され、言葉が出ない。その様子を見ていた綾人がおかしそうに笑い出す。ムッとしたのも束の間、すぐに私も噴き出し、わけがわからないといった顔する凌空を挟んでふたりで笑い合った。
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