別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 翌日の午後、私は約束通り綾人のマンションに向かっている。

 昨日、遊園地で大はしゃぎだった凌空は、晩御飯を食べないまま眠ってしまい、朝までぐっすりだった。たくさん寝たからか、朝はすっきり目覚め、保育園の担任の先生にお出迎えされた際には『りく、ゆうえんちいった!』とさっそく自慢していた。

 よっぽど楽しかったんだろうな。

 私も仕事を頑張ろうと打ち合わせを二件こなし、先方に提出する確認用の動画も上司に預けてきた。無事に午前中で仕事を終え、会社を出る。

 綾人のマンションは、付き合っている時と同じだった。

 使う駅名や路線はしっかり覚えていて公共交通機関を乗り継いている間も、妙な緊張感に襲われる。私が綾人を振って一方的に部屋を出て以来なのだと思うと、複雑な感情が交錯する。

 でも今の私たちは結婚して、正式に夫婦になったんだ。

 お互いに誤解も解いたし、想いも伝え合った。あの頃の不安定さはもうないはずだ。左手の薬指にはめている指輪を見つめ、気合いを入れる。

 余計なことは考えず、荷造りを頑張ろう。

 いないかもしれないから、と綾人にカードキーを渡されているので彼へ事前に連絡するべきか迷ったがそのまま向かう。

 インターホンを押したが、返事はなかったのでやはりいないのかもしれない。カードキーを使い、私は玄関のドアを開けた。ひんやりとした風が肌に当たり、空調完備のマンションは暑すぎず寒すぎずにちょうどいい。
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