別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「可南子は舌も肌も全部、柔らかいな」

 すっかり余裕を取り戻した綾人が私に触れながら満足そうに呟く。

「綾、人」

 逆に私は息が切れそうだ。肩を押そうとするがびくともせず、ベッドに乗り上げているこの体勢では、逃げるに逃げられない。

 すると綾人は背中に回していた手を止め、急に真剣な面持ちで私を見つめてきた。頤に手をかけられ、親指の先で唇をなぞられる。

「可南子が欲しい。全部欲しいんだ」

 あまりにも艶めいた表情と瞳に、目を奪われ心が揺れる。

「で、でも……綾人は、休んだ方が……」

 精いっぱいの冷静さでたどたどしく答えるが、完全に拒否できない。

「もう十分に休んだよ。可南子は俺を欲しがってくれないのか?」

 切なそうに問いかけられ、息を呑んだ。しばらく葛藤してから、素直に想いを告げる。

「私も……綾人が欲しい。愛されたい」

 こんなこと、私に言う資格があるのかな?

 そう思った次に瞬間、ぎゅっと抱きしめられた。続けて首元に顔をうずめられ、ぞくりと鳥肌が立つ。そこに気を取られる間もなく、ちゅっと音を立てながら肌に口づけを落とされていった。

 その間に綾人の手によってカットソーとキャミソールをまとめて胸元までたくし上げられる。

「あっ」

 肌が空気に晒され、羞恥心も相まって声が漏れる。そしてとっさに庇うように胸元を押さえた。

「わ、私、今日、お洒落とか全然気にしてなくて」

 綾人の実家に行った時、服装や髪を褒めてもらったのに、今日は荷造りをするのがメインだと思って、シンプルなカットソーにジーンズという組み合わせだ。髪も下着も特段力を入れておらず、色気とかムードとかそういうものがひとつもない。
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