別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「可南子は俺のものだって印」

 文句のひとつでも言いたくなったが綾人の嬉しそうな顔になにも言えなくなる。

「綾人は、脱がないの?」

 彼のシャツを掴んで、小さく尋ねた。すると意地悪そうな笑みで問いかけられる。

「脱いでほしい?」

「うん」

 素直に頷いたら綾人が虚を衝かれた顔になった。

「私ばっかりは嫌。綾人も一緒がいい」

 愛されたいとは言ったけれど、一方的じゃなくて愛し合いたい。私も綾人を愛している。

「敵わないな、可南子には」

 そう言うと彼は素早くシャツのボタンを外し、さっさと脱ぎ捨てる。

 自分から脱いでほしいと言ったものの恥ずかしさで目のやり場に困る。けれどほどよく引き締まった体に、思わず見蕩れてしまった。昔よりも鍛えているのか、私とは全然違う。

 不意に目が合うと真正面から抱きしめられた。直に触れ合う肌の感触や伝わる体温に、意図せず鼓動が速くなる。

「好きだよ、愛してる」

 耳元で囁かれ、そのままうしろに押し倒される。ベッドの軋む音と微妙な振動を受け、視界が反転した。

「可南子」

 低く色っぽい声で名前を呼ばれ、彼の頬に手を伸ばす。

「好き」

 たった二文字を口にしただけで胸が熱い。その言葉を封じ込めるように唇が重ねられた。

 そのまま綾人の首に腕を回し、彼に溺れていく。別れを決意した時、切なさで胸が苦しかった記憶を塗り替えるように優しく丁寧に触れられ、たっぷりと愛を注がれていった。
< 141 / 189 >

この作品をシェア

pagetop