敏腕パイロットは最愛妻を逃がさない~別れたのに子どもごと溺愛されています~
「可南子」

「とにかく、もう寝るね。大丈夫、そのうち落ち着くと思うから、心配しないで」

 凌空を抱っこし、寝室とは別にベッドのある部屋に向かう。少しだけ明かりを落とし、いつものように凌空とベッドに入った。

「おかあしゃん、ほん、よんでー」

「はいはい」

 何冊かベッドサイドテーブルに置いてあるうちのひとつに手を伸ばす。引っ越してすぐの夜、寝室でいつものように凌空に絵本を読もうとしたら、綾人が興味深そうに一緒にベッドに入ってきた。なんだか照れくさいけれど、凌空を挟んで三人で並んでいることに幸せを噛みしめる。

 そのまま凌空と寝落ちしてしまったが、夜中に目覚めた時に綾人の姿はベッドにはなかった。そっとリビングに足を運ぶと、綾人が真剣な表情で、なにかの本を読んでいる。そばには書き留めるノートがあり、ああやって勉強しているのだと知った。

 マンションの立地を凌空の保育園の送り迎えや私の職場のことも考慮してくれた結果、空港まで遠くなり、綾人の負担がこうして増えてしまった状況に胸が痛んだ。

 そんな綾人の負担を少しでも軽くして、すり合わせていきたい。凌空も同じだ。

 綾人と凌空を幸せにしたい。だから最善をつくさないと。

 絵本を読み終わる頃には、凌空の目は半分閉じていた。保育園で昼寝をしてきても家であれだけはしゃいでいたら疲れるだろう。

 とんとんとリズムよく叩くと、ゆるやかに凌空の目が閉じられる。
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