別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「可南子は?」

「私も、こうして綾人と一緒にいられて嬉しいよ」

 少しだけ頭を浮かせ、綾人に視線を送る。

「綾人は……どう?」

 わずかに緊張を伴って質問すると、彼はこつんと額を重ねてきた。

「そうだな、可南子がいってらっしゃいって笑顔で見送ってくれて、帰ったら凌空とおかえりなさいって迎えてくれるのが、今はなによりも嬉しい」

 穏やかな顔で告げる綾人に、これからもいる時は見送りと出迎えは欠かさずしようと誓う。

 ジッと彼を見つめていたら、そっと口づけられた。上唇と下唇を交互に食まれ、角度を変えて何度もキスをされる。お返しと言わんばかりに、舌先を出して彼の唇をかすめた。

 それが合図のように綾人も舌を滑り込ませて、キスは深いものになっていく。

  ややあって唇が解放され、口端からこぼれそうな唾液を綾人が器用に舐めとった。恥ずかしさで顔が熱くなる。

 うつむき気味になる私の頬に綾人が軽く口づけた。

「かわいい。終わらせたけど、もっとしたくなった」

「もうダメ」

 唇を尖らせ拒否する。明日は土曜日だが、綾人は朝が早いし、凌空だって起きる可能性がある。私の返答に納得したのか、綾人は短く唇を重ねてきた。

 私の髪に指先を通し、愛おしげにこちらを見てくる。そんな彼に胸を高鳴らせていると、不意に綾人が真剣な顔になった。

「可南子が、過去に結婚しようと思っていた相手ってどんな男?」

 あまりにも前触れもなく尋ねられた質問に、目の前が真っ白になる。
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