別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 続けて心臓が一気に加速し、動揺する中でなんて答えればいいのかを必死に考える。

 なんで? どうしてそんなことを聞くの?

 そう言いたい気持ちを抑え、私はうつむいた。

「い、言いたくない」

 これ以上、話を広げられるのが怖かった。綾人の問いかけでは、そんな相手はいないと答えられない。好きでも気持ちがあったわけでもないけれど、両親のために別の男性と結婚しようとしたのは本当だ。

 綾人はなんて言うだろうかと、不安で押し潰されそうになる。

「そうだな。変なことを聞いて悪かった」

 頭に手を置かれ、申し訳なさそうに呟かれる。違う。綾人は悪くない。

 私は小さくかぶりを振って、ソファから立ち上がった。

「凌空がそろそろ起きるかもしれないから、行くね。綾人も早く休んで、無理しないでね」

 綾人の顔が見られないまま私はそそくさとリビングを後にする。

 眠っている凌空の横にそっと潜り込むが、綾人の質問が何度も頭の中でリフレインされて胸が苦しい。

 綾人、どうしたのかな? 結婚したから、余計に気になった?

『綾人も内心、あなたのことを信じ切れていないでしょうね。また裏切られるんじゃないかって』

 川嶋さんの言葉に胸がざわつく。やっぱり、綾人には本当のことを話すべきだ。嘘はもういやだ。綾人とずっと一緒にいたい。……夫婦でいたいならしっかり向き合おう。

 今の私たちなら大丈夫。そう信じて瞼をぎゅっと閉じた。
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