別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「莉愛を送り届けるの、付き合ってくれてありがとう」

 お礼を告げ体の向きを変えようとしたら、掴まれていた手を彼の方に引かれる。

「そんなに警戒しなくても、なにもしないよ。近いとはいえ女の子をひとりで帰すわけにいかない」

 苦笑混じりの声に、なんだか恥ずかしくなる。警戒したわけでも、進藤くんを信用していないわけでもない。ただ――

「でも、みんな進藤くんが戻ってくるのを待っているんじゃない?」

 タクシーに乗っているとき、彼のスマホには何度も着信やメッセージらしきものが送られていた。さりげなく大丈夫かと尋ねたら二次会の店が決まったお知らせだと彼からは短い回答があった。

 進藤くんが私たちを送るのをやきもきしながら見送った女子も多かっただろう。もっと話したい男子もいるに違いない。

 私はわざと明るく続ける。

「進藤くんって周りをよく見ていて気遣いもできて、すごいね。莉愛がお酒を飲んで調子悪そうなのに気づいて、こうして送っていくのも付き添ってくれるんだもの。でももう十分だから、こんなときくらい自分の気持ちを優先してね」

 おそらく彼は誰に対しても世話を焼いてしまう性分なのかもしれない。莉愛に対する下心があると疑ってしまってちょっとだけ申し訳なかった。

 そういった彼の人間性もあってパイロットに内定したのだろう。でも他人のことばかり優先しなくてもいいと思う。
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