別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 ふと手を取られたままなのに気づき、恥ずかしさで振りほどこうとしたら彼が口を開く。

「山口さん、俺を買いかぶりすぎだよ。俺はいつも自分の気持ちしか優先していない」

 静かに告げられた言葉に、目をぱちくりとさせる。彼を見たら困惑気味に微笑んでいた。

「周りをよく見て気遣いができるのは山口さんの方だよ。俺は前橋さんを気にしていたんじゃなくて、前橋さんを心配している山口さんを気にしていたんだ」

「え?」

 まさか莉愛ではなく私を気にしていたなんて。彼になにか心配や気にかけられるようなことがあっただろうかと思い返すが、心当たりがない。

 混乱する私に進藤くんは一歩距離を詰めてきた。

「前橋さんを送るのに付き添うって言ったのも、こうして山口さんとふたりになる機会が欲しかったからだって言ったら、軽蔑する?」

 目を細めながら、どこか自嘲的に聞いてくる進藤くんに私はなんて答えればいいのかわからなかった。そもそも状況が理解できない。

「なん、で? 私……」

 莉愛ではなく私なのか。初対面でも、彼の周りには話が弾みそうな女子はたくさんいたのに。もしかして一番話してなかったから?

「山口さんともっとふたりで話してみたかったんだ」

 彼の笑顔に胸がときめく。そんなことを言われたのは生まれて初めてで、どう受け止めるべきなのか一瞬、悩んだ。

 けれど、なんとなく彼が嘘をついている様子もなく、邪な考えも感じない。
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