別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「心配しなくても、なにかあったら声がかかるだろうし、そういうのも含めて母さんが面倒を見ると言ったんだ。甘えておけばいい」

「そう、かもしれないけれど凌空と離れて寝るなんて初めてで……」

 不思議な感覚だ。心許ないとでもいうのか。ましてやここは綾人の実家で、まさか前に見せてもらった彼の自室のベッドで、ふたりで寝ることになるなんて。

 変に意識をしてしまい、頭を振る。

「ごめんね。綾人もいろいろあって疲れているのに……。私のことは気にしないで休んでね」

 笑顔で告げて再び彼に背を向ける。私が眠れないのは凌空が気になるからだけではなかった。

「可南子」

 今度は名前を呼ばれたのと同時にうしろから力強く抱きしめられる。お互い薄いパジャマ越しだったので体温や腕の感触がいつもよりリアルに伝わってきた。

「別れた時のこと、本当に悪かった。俺のせいでつらい思いをさせて……。あの時、もっと可南子とちゃんと話し合っていたらって改めて後悔している」

 綾人の切羽詰まった声に心が揺れる。まさか大林さんの息子さんとの結婚に、川嶋さんが絡んでいるとは思いもしなかった。

 とはいえ綾人が自分を責める必要などどこにも ない。

「あ、謝らないでよ。私も驚いたけれど、綾人はなにも悪くないじゃない。私が勝手に……」

 そこで言葉に詰まる。事実を知っても、すっきりするどころか私の中にある黒い淀みはさらに増していくばかりだった。
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