別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「今日もそうだった。パイロットとして飛行機に乗っていたら、優先すべきは乗客の安全だ。どんな状況に陥ってもそう簡単に可南子に連絡を取ることはできない」

 今日の事故を思い出す。綾人の身を案じて、不安で押し潰されそうだったけれど、無事を祈るしかできなかった。もしかすると、これから先だって起こりえるかもしれない。

「フライト勤務をしていたら、万が一可南子や凌空になにかあってもすぐに連絡は取れない上、駆けつけることもできない。そんな仕事なんだ」

 当然のようで、いかに綾人が厳しい職務についているのか思い知る。私や凌空の存在は彼にとって――。

「でも俺は可南子や凌空をいつだって誰よりも想っている。俺にとって一番大切なんだ。それだけは揺るぎない」

 綾人は迷いなく、真っ直ぐに告げた。

「一番にできないなんて思わなくていいんだ。可南子が好きでもない男と結婚しようと思うほど、ご両親を大事に思っているのも、いつも凌空を大切に想っていて、最優先で考えているのも、全部わかっているから。自分を後回しにして人のことばかりで……。そんな可南子から目が離せなくて 、救われて……俺は好きになったんだ」

 優しく語りかけてくる綾人の表情は穏やかで慈しみにあふれている。安心する、大好きな綾人の顔だ。じっと見ていたら目の奥が熱くなってくる。
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