別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「これからは可南子が大切にしているものを俺も一緒に大事にしていく、守っていく。ひとりで背負う必要はない。だからなにも怖がらずに俺を信じて、そばにいることを選んでほしいんだ。俺の帰りを凌空と待っていてくれないか? それだけで俺は十分に幸せだよ」

 機長さんの言った通り、綾人の声は心を落ち着かせる。視界がぼやけるのは部屋が暗いからじゃない。目の端からこらえきれず涙があふれそうになり、綾人に抱きついた。

 この体温も、この場所も、ずっと恋しくて求めてやまなかった。私だけのものだ。

 綾人は私を強く抱きしめ返し、ゆるやかに頭を撫でる。

「あの時は、頼りなくてごめん。言葉も態度も足りなくて、可南子が悩んでいると気付けずに、自分のことで精いっぱいだった」

「私もごめんね。勝手に綾人との関係に不安を抱いて、相談もなく自分の身の振り方を決めたりして……」

  今やっと本当の意味で彼と向き合えた。

 ひとりでため込んで、我慢して結論づけるのは、やめよう。変わりたい。綾人と寄り添いながらずっと一緒に歩いていきたいから。

「可南子を愛している。もう二度と手放さないし、誰にも渡さない」

 その言葉を封じ込めるように唇を重ねられる。彼の首に腕を回すとキスをしたまま体勢をずらされ、ベッドの軋む音と共に綾人の下に体を滑り込まされる。

 唇が離れると至近距離で私を見下ろしている綾人の顔が目に映った。暗くてもはっきりとわかる。端整で妖艶で、この瞳に逆らえない。
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