敏腕パイロットは最愛妻を逃がさない~別れたのに子どもごと溺愛されています~
 どちらからともなく触れるだけの口づけを数回繰り返し、あっという間に深いキスへ移行していく。

「んっ……んん」

 綾人を求める気持ちと、これ以上キスを交わしていたら自制心が効かなくなりそうで怖い 気持ち。相反するふたつの 思いに葛藤しながら綾人に身を委ねる。彼への好きが あふれて、涙がこぼれそうだ。

「はっ」

 名残惜しく唇が離れ、熱っぽい視線が絡み合う。綾人は私をギュッと抱きしめると首筋に唇を寄せてきた。彼の吐息が薄い皮膚にかかり、つい身をよじる。

「んっ」

 さらに彼の手がパジャマ越しに上半身を撫でていく。緩急をつけた触り方に、さすがにこれ以上進むのは危険だと判断した。

「ね、ここ実家だし」

「大丈夫。両親の部屋はここから遠いから、可南子が声を抑えてくれたら問題ない」

 やんわりと止めようとするが、綾人は意に介さない。それどころか触れる手を止めず、じわじわと私の中の欲望を引き出していく。

「そういう問題じゃっ」

 反論しようとしたら、唇を塞がれる。彼の手は器用に私のパジャマの前ボタンを上からはずし、首元から直接手が滑り込んだ 。

「あっ」

 もうこうなってしまっては、降参するしかない。私も綾人が欲しくてたまらない。抵抗をやめた私に綾人は目を細める。

 しかし次の瞬間、彼のスマホが音を立てた。あまりにも突拍子もない事態に心臓が跳ね上がる。

 綾人は手を止め、スマホを確認すると、面倒くさそうに電話に出た。
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