別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「ああ、わかった。迎えに行く」

 ぶっきらぼうに答えて電話を切るが、今のやり取りだけでおおよそ予想はついた。

「どうやら凌空の目が覚めて、いろいろ寝かしつけてはいるみたいだが、なかなか寝ずにいるらしい」

「む、迎えに行かないと!」

 慌ててパジャマのボタンを留め直し、手櫛で髪を整える。先ほどまでの甘くて熱い空気はさっと消えた。

 綾人もベッドから下りて立ち上がる。

「やっぱり凌空には敵わないな」

 苦笑する綾人の横に並び、彼の手を取った。

「私ね、もしも凌空を妊娠していなかったら、そのまま両親のために結婚していたと思う」

 目を丸くする綾人を見上げ、微笑んだ。

「凌空が……綾人が守ってくれたんだね。離れている間も、ずっと……」

 妊娠がわかって、戸惑って、苦しかった。綾人の顔が何度もよぎって、自分の選択を悩んだ。けれど、生まない選択肢はない。誰よりも大好きな綾人との子どもだから。

 綾人は一瞬、泣き出しそうな顔をした後、優しく笑った。

「感謝しないといけないな。可南子はもちろん、凌空にも」

 綾人の言葉に頷く。

 凌空がおなかにやってきて、切れたはずの綾人との縁を繋いでくれていた。思えば、凌空がきっかけで私たちは再会できた。

 凌空は私たちがこうして向き合って、家族になるのをずっと願って見守ってくれていたのかな?

「今日は三人で眠ってみようか」

 綾人と顔を見合わせた後、私たちは愛しい宝物を迎えに行った。
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