別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
エピローグ
「たかいねー。くも!」

「す、すごいね」

 十月に入り、八月に取り損ねていた夏季休暇をまとめて取得し、綾人と凌空と旅行することになった。行き先は神戸で、飛行機をはじめとする乗り物の博物館があるので、凌空のためにそこをメインの目的としていろいろ楽しむ予定だ 。

 もちろん飛行機を使うことになり、私は乗り込んで飛行機が動き出す前から緊張しっぱなしだった。私の不安など知る由もなく、膝の上で凌空はずっと外に釘づけになっている。

 窓際の席でよかった。

 綾人に空酔いしない方法を聞いて、姿勢に気を付けたりしてなんとか離陸は乗り越えられた。グングン空に上がっていく感覚は初めてで、恐怖や不快感というより不思議な感じだ。

 というのも私よりも凌空の方が心配で、ずっと気が気ではなかった。そうやって気を逸らせたのがよかったのか。肝心の凌空は飛行機の搭乗者限定のおもちゃをもらって大喜びだ。

「飛行機が初めてだとお聞きしています。なにかありましたら遠慮なくお声をかけてください」

「あ、ありがとうございます」

 おもちゃを渡される際に客室乗務員の女性に声をかけられ驚く。

 私がなにか申告した覚えはないので、綾人が気を回したのだろう。機内で打ち合わせをする際に、乗客の情報を共有すると言っていたから。

「すごい、本当に窓の外が空だ」

 当然と言えば当然で、窓から見えるのは青い空にふわふわの雲が流れていく。乗る前の天気は微妙だったのに、雲の上に出たからか、太陽が顔を出していた。
< 186 / 189 >

この作品をシェア

pagetop